botanical days

夏夜追涼

夜熱依然午熱同
開門小立月明中
竹深樹密虫鳴処
時有微涼不是風


夜になっても 午の暑さが残っている
戸を開けて しばらく月明かりの下に立っていた
竹が深く茂り 樹々が密生しているその中で 秋の虫が鳴いた
その時微かに涼しくなった 風も無いのに

 「竹」と聞くと、それだけで深みのある蒼い香りを感じる。
香水にも竹の香りを使っているものがあるので、私の記憶にはその香りの印象が強くなってしまっているかもしれないけれど、おおよそ本物の竹の匂いの記憶と相違はないだろうと思う。
楊萬里のこの詩では、竹藪の中で鳴いた虫の声に微かな秋の気配を感じている。竹藪に虫の声。そんな風に想像しただけでも、十分に涼を感じることができる。うだるような暑さが続くと、ほんの少しの涼でもどこかにないものかとつい探してしまう。最近は街を歩いていたら、お店から吹き出る空調の冷たい風を感じてホッとできるものだけど、そうじゃなかった時代の涼の感じ方とはなんと繊細なものだろう。都会に住む人たちにとって竹の存在も虫の鳴き声も身近ではなくて、耳に聞こえるのは、空調の機械音。ヴゥーンヴゥーン。

そう言えば、今静岡の淡竹林が120年周期の開花時期を迎えているのだという。竹の花のミステリというくらい、竹の花が咲く周期というのは不思議で、花を咲かせなくとも

花を咲かせると竹は枯れてしまう。静岡の淡竹林はこれからどんどん枯れていってしまうのだ。
種子がほとんど実らず、枯れてしまっていく竹林は、これから姿を消してしまう。竹林の再生には10年前後かかってしまうそうである。

竹とは不思議な植物だ。濃厚な深い緑の香りは、その風景をあっという間に竹のある風景に変えてしまう。
子供の竹は食し、大きくなった竹は建材にも使われる。食器なんかにも使われるし、蓙になったりもする。そばにあるとふと涼しさを感じる。
こんなにも身近に存在しているのに、まるで理解できていない。
まるで二月生まれのあの人のようだ。


楊萬里 南宋の学者、詩人。字は廷秀。号して誠齋。吉水(現・江西省吉水県)の人。1127年(靖康二年/建炎元年)~1206年(開禧二年)。生涯、抗金に勤めた。南宋の「中興四大詩人」の一。

 

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Milch Inc.LLC は「暮らしをデザインする」をモットーに、2015年に設立。 BOTANICAL ITEMを制作販売するブランドMILCH<ミルヒ>と、LIFE STYLE ITEMを取り扱うMILCH/02<ミルヒ/02>を運営しています。     ロゴはMILCHの誕生日である3月25日の花[アルストロメリア]をモチーフにしてデザインしています。